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『彼女が知らない隣人たち』感想|家族と社会の“ひずみ”を映すリアルな物語

2022年新刊KADOKAWAあさのあつこ文芸・小説
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NANAKO
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こんにちは🌿.*
📖NANAKOの本棚📖
へお立ち寄りくださりありがとうございます。
今日ご紹介するのは、あさのあつこさんの小説『彼女が知らない隣人たち』です。

📖 本の基本情報

タイトル教彼女が知らない隣人たち
著者あさのあつこ
出版社‎ KADOKAWA
発売日2022年3月
ページ数264ページ
ジャンル文芸小説

📝 あらすじ

地方都市で暮らす三上咏子は、縫製工場でパートをしながら、高校生の息子・翔琉と小学生の娘・紗希、そして夫・丈史と共に、ささやかながら穏やかな日々を送っていました。

ところがある夕方、駅前の商業施設から白い煙が立ちのぼるのを目撃します。この小さな事件をきっかけに町全体に不安が広がり始めます。そして咏子のまわりにも、少しずつ不穏な影が忍び寄ります。パート先での理不尽な出来事に心を痛め、息子や娘との関わり方にも悩みます。そして、夫の丈史に感じてしまう説明のつかない違和感……。

咏子はこれまで見過ごしてきた、日常のひずみや小さな異変に気づきはじめるのでした――。

💭 読んだ感想(ネタバレあり)

一言で言えば、「社会の分断や偏見といったテーマを、家庭の視点から丁寧に描き出した物語」でした。
咏子の家族に起こる出来事は決して大きな事件ではありませんが、SNSでの心ない言葉や、暮らしの中での生きづらさ、不安定な職場環境など、今まさに私たちが直面している問題が映し出されています。読んでいて「これはフィクションでありながら現実だ」と何度も思わされました。

また、親子関係の描写が胸に刺さりました。思春期の翔琉が母に反発しながらも、根っこの部分で誠実で優しい子であること。健気な紗希が「嫌われたくない」と母に気を使う姿。そして、夫・丈史に募る違和感。家族がぶつかり合いながらも、それぞれに悩み、考え、成長していく過程が丁寧に描かれていて、“社会派小説”としてだけではなく“家族小説”としても心に残りました。

国際的な問題や家庭内での衝突など、正直、一主婦の目線では理解しきれないテーマも多いのですが、最後に咏子が「自分たちにできることを考えていこう」とパート仲間に語る場面には、深く頷かされました。大きな出来事の前に無力感に沈むのではなく、小さくても自分にできることを探していく――その姿勢が大切なのだと思います。

社会の中のささやかな思い込みや行動について、私自身も振り返らされる一冊でした。

☕ この本は、こんな人におすすめ

  • 社会的なテーマを“身近な物語”として考えてみたい人
  • 親子や夫婦のリアルな関係性を描いた小説が好きな人
  • 先入観や思い込みについて、自分なりに向き合ってみたい人
  • 重たいテーマを扱いながらも、読みやすい物語を探している人

🔚 おわりに

『彼女が知らない隣人たち』は、社会的なテーマを丁寧に描いた物語でした。日常の中に潜む小さな違和感や、気づかされる出来事を通して、私たちが暮らす世界をあらためて考えさせられます。
その中で、主婦であり母である咏子が、閉じた日常から一歩外へ踏み出す姿は、小さな希望の光として心に残りました。
人とのつながりや思い込みに気づかされる今の時代に、ぜひ手に取ってみてほしい一冊です。

NANAKO
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最後までご覧いただき、ありがとうございました。この記事が、あなたと素敵な一冊との出会いにつながれば幸いです。
また次の本で、お会いしましょう!