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📖NANAKOの本棚📖
へお立ち寄りくださりありがとうございます。
今日ご紹介するのは、村田沙耶香さんの小説『消滅世界』です。
📖 本の基本情報
タイトル | 消滅世界 |
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著者 | 村田沙耶香 |
出版社 | 河出書房新社 |
発売日 | 2015年12月 |
ページ数 | 253ページ |
ジャンル | 文芸小説 |

「コンビニ人間」を借りに図書館へ行ったのですがあいにく貸出中だったので、同じ作家さんのこちらの本を借りてきました。
📝 あらすじ
物語の舞台は、人工授精が急速に進化した、パラレルワールドの日本。
この世界では、生殖と快楽が完全に分離され、人々は恋愛や快楽の対象を「恋人」や「キャラ」としながら、子どもは人工授精によって授かるのが当たり前に。夫婦間の性行為は〈近親相姦〉とみなされ、厳しくタブー視されています。
そんな中、“自然妊娠”によって生まれた主人公・雨音。
彼女はパートナーの朔と共に、清潔で無菌な理想の家族を築こうとしていました。
しかし、ある出来事をきっかけに、2人は千葉の実験都市〈エデン〉へ移住することになります。
その地では、男性も人工子宮によって妊娠できるという、新たな繁殖のかたちが模索されていました。
もはや〈家族〉という概念に縛られず、人が子を持つということ、愛し合うということの根本が揺らぎはじめます――。
💭 読んだ感想(ネタバレあり)
すごい本に出合ってしまいました。
ぶっ飛び沙耶香ワールド!!すごい衝撃です。
性に関するワードがけっこう出てくるので、耐性がないとちょっとしんどい?かもです。
人類にとって「必要なもの」だけを合理化し、「不要」とされたものを切り捨てていった先はこんな世界なのかと、背筋が寒くなりました。
この物語の中では「愛」や「恋愛」、「家族」は「人を管理するために社会が作り出したもの」とされ、徐々に意味を失っていきます。そして子どもを産むことも、もはやAIによる管理と人工授精でまかなわれる時代。性欲や家族も、生き延びるための機能にすぎなかった…と、割り切られてしまうんです。
そして物語の終盤に集約された問い――。
「繁殖を目的としない快楽としての性欲は、必要か否か?」
この物語のように、もしそれらすべてが合理化され、システム化された世界が現れたとき、人間らしさとは一体どこに残るのか――という問いが、浮かび上がってきますよね。
ダーウィンの進化論で、似たようなことを聞いたことがあるのを思い出しました。
ダーウィンの説では、生き物は「生き延びること」と「子孫を残すこと」に有利な性質を自然に選び取っていく、という考え方があります。
つまり、性行為に快楽があるのは、“気持ちいいからやりたくなる” → “結果的に繁殖がうまくいく”という、生き残り戦略なんですよね。
でもこの物語の世界ではその「快楽」が、もう必要ないよねって扱われてしまう。
人工授精で繁殖できるなら、わざわざ手間も感情もかかる性欲なんて、いらないのでは?という考え方です。
それってすごく合理的なんだけど、どこか寂しい。
私たちが人とつながろうとする気持ち、触れたいと思う感情、恋やときめきも、全部「不要」って言われてしまうような気がして。
たしかに性欲や愛情って、ときに面倒だし、コントロールできなくてやっかいだけど、その「やっかいさ」こそが、人間らしさの一部なんじゃないかと思いました。

いやいやいや…!
めっちゃ考えさせられましたよ。
すごい小説です。
☕ この本は、こんな人におすすめ
🔚 おわりに
よく「ディストピア」と紹介されている本ですが、実は村田先生はこの本を「ユートピア」として書いたのだそうです。
倫理やタブーに触れる描写も多いため、読むのに体力がいる面もありますが、読後には必ず何かを考えさせられる一冊です。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。この記事が、あなたと素敵な一冊との出会いにつながれば幸いです。
また次の本で、お会いしましょう!