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『笑うマトリョーシカ』感想|幾重もの仮面の、その下の正体は?

2021年新刊文芸・小説文藝春秋早見和真
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NANAKO
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こんにちは🌿.*
📖NANAKOの本棚📖
へお立ち寄りくださりありがとうございます。
今日ご紹介するのは、早見和真さんの小説『笑うマトリョーシカ』です。

📖 『笑うマトリョーシカ』とは?基本情報とあらすじ

本の基本情報

タイトル笑うマトリョーシカ
著者早見和真
出版社文藝春秋
発売日2021年11月
ページ数418ページ
ジャンル文芸小説

あらすじ

四国・松山の名門高校で出会った、2人の青年。
一人は、若くして国会議員となったカリスマ政治家。
もう一人は、彼の秘書として、官房長官の座へと押し上げる影の立役者。

誰もがその男に希望を託しました。
しかし、彼の“本当の姿”を知っている者は、果たしてどれほどいたのでしょうか。

「この男が誰かに操られているとしたら?」
そう疑念を抱いた女性記者は、過去を掘り起こし、2人の青年が歩んだ歪んだ軌跡に迫っていきます――。

💭 読んだ感想(ネタバレあり)

読書中に感じたこと

読み進めるうちに、清家の言葉や行動の一つ一つが「本心なのか、それとも演技なのか」と気になって仕方ありませんでした。
政治家の発言には常に裏と表があるのかもしれない、と考えさせられ、自然と緊張感を持ってページをめくることに…汗。

特に「ハヌッセン」という不気味な存在が登場してからは、視線の奥に隠された影のようなものを強く感じました。
清家を導いているのは誰なのか。あるいは清家自身が黒幕なのか――。
その答えを知りたくて、夜更けまで一気読みしてしまいました。

私が惹かれた登場人物の魅力

清家一郎の描かれ方は、本当に巧妙です。
外側から見れば、清廉潔白な政治家であり、国民に希望を与える存在。
けれど内面をのぞくと、恐ろしいまでの欲望や脆さが浮かび上がってきます。

彼を支える秘書の存在も印象的でした。
「操る人」と「操られる人」。
この二人の関係性は単なる上下関係ではなく、依存と支配が複雑に絡み合ったものです。
読んでいると、どちらが本当に強いのか、何度も考えさせられました。

物語の舞台や雰囲気を味わうコツ

一見すると「政治小説」と身構えてしまうかもしれませんが、本質は人間ドラマです。
清家が演説する場面には圧倒的なカリスマ性があり、群衆の熱気が伝わってくるほど。
また、女性記者が取材を進める描写はリアルで、ジャーナリズムの厳しさと緊張感が漂っていました。

そして、松山という舞台設定も大きな意味を持っています。
東京ではなく地方都市から始まる物語だからこそ、人物の“原点”が際立ち、二人の青年がなぜこうした運命を歩んだのか、納得させられるのです。

読後に気づいたこと

最後まで読んだとき、心に強く残ったのは「見くびるな」という一言。
清家一郎は“操られる人形”のように見えて、実は――。
読者の予想を鮮やかに裏切る展開に、思わず鳥肌が立ちました。

「人はどこまで他人を操れるのか?」
「真実を見抜く目を持つのは誰か?」
そんな問いが、読後もずっと頭から離れません。

☕ この本は、こんな人におすすめ

  • ミステリーやサスペンスが好きな人
  • 政治の世界の“裏”をのぞいてみたい人
  • ぞわっとする読後感が残る物語を読んでみたい人
  • ドラマ化された作品を原作で味わいたい人

🎬 ドラマ化情報

この作品は2024年、TBS系でドラマ化されました。
主演は水川あさみさん、清家一郎役に櫻井翔さん。

ドラマでは映像で“仮面”の表情がよりリアルに伝わってくるので、原作を読んでから見ると二重に楽しめます。
俳優さんの演技によって「仮面の下の顔」がさらに鮮やかに描き出されますね。

とくに、原作を読んでからドラマ版を観ると、「演じられるとこうなるんだ」と比較しながら楽しめます。キャラクターの解釈の違いを感じ取るのも楽しいです。


🌱 読書体験をさらに広げるポイント

・マトリョーシカを意識して読む
この作品の中でマトリョーシカが表しているのは、幾重にも重なった性格や考え方のこと。外側の顔と内側の顔を重ね合わせることで、人物の多面性を深く理解できると思います。

・時事ニュースと照らし合わせる
現実の政治家やニュースを思い浮かべながら読むと、作品のリアリティがぐっと増します。具体的にお名前を出すのは控えますが…汗

・別の著者作品とつなげて読む
同じ著者の別の作品(➡︎ 『早見和真』作品レビュー一覧)や、政治や心理をテーマにした小説(➡︎ 政治小説おすすめレビュー)と並べて読むと、表現や着眼点の違いが見えてより面白くなると思います。

🔚 まとめ

タイトルがドンピシャでした。
マトリョーシカのように、人の中には“別の顔”が隠れていて、その奥にいるのは一体誰なのか――。
支配欲や承認欲求が複雑に絡み合う心理戦が面白く、とても引き込まれました。

操られているようで、実は――。
誰が本当の主導権を握っていたのか、最後の最後まで目が離せないです。

静かに、ぞくりと、じわじわと心に響く一冊でした。
ぜひ、じっくり味わってみてください。

NANAKO
NANAKO

最後までご覧いただき、ありがとうございました。この記事が、あなたと素敵な一冊との出会いにつながれば幸いです。
また次の本で、お会いしましょう!