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『喫茶おじさん』感想|人生もコーヒーも「苦いけれどうまい」

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NANAKO
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こんにちは🌿.*
📖NANAKOの本棚📖
へお立ち寄りくださりありがとうございます。
今日ご紹介するのは、原田ひ香さんの小説『喫茶おじさん』です。

NANAKO
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かわいい表紙ですよね ෆ⸒⸒

📖 本の基本情報

タイトル喫茶おじさん
著者原田ひ香
出版社小学館
発売日2023年10月
ページ数258ページ
ジャンル文芸小説

📝 あらすじ

松尾純一郎、57歳。バツイチの元サラリーマン。
大手ゼネコンを早期退職し、現在は無職。妻と娘とは別居中で、再就職の見通しも立っていません。趣味もなく、日々に張り合いを感じられないまま過ごしていました。

そんなある日、ふらりと立ち寄った純喫茶で、コーヒーとタマゴサンドに心を癒された純一郎は、「これからは純喫茶巡りを趣味にしよう」と思い立ちます。

「おいしいなあ」「この味、この味」
コーヒーと、その店ならではの看板メニューを味わいながら、各地の純喫茶を巡る純一郎。
しかし、そんな彼にも“苦い過去”がありました。
妻の反対を押し切って退職金をつぎ込み、念願の喫茶店を開いたものの、わずか半年で閉店に追い込まれてしまったのです。

仕事、老後、そして家族との関係――
いくつもの問題を抱えながらも、今日もまた純一郎は、一杯のコーヒーを求めて純喫茶の扉を開きます。

💭 読んだ感想(ネタバレあり)

コーヒー、クリームソーダ、ナポリタン、卵サンド、あんバター、チーズケーキ、プリンアラモード!!

物語に描かれる純喫茶の雰囲気は、まさに昭和レトロの世界そのものです。
カップから立ちのぼるコーヒーの香りや、じっくりと焼き上げられたトーストの描写が非常に丁寧でリアルなので、まるで自分がその喫茶店にいるかのような気持ちになります。
喫茶店やコーヒー好きの私にはたまりませんでした!

全国の喫茶店をめぐる旅の中で、ただのグルメやレトロな空間だけではなく、人生の苦みや孤独、それでも続いていく日常が描かれていました。
そして、ほんの少し前を向くための“気づき”も、ちりばめられていました。

ただ味を楽しむだけではなく、その一杯を通して昔の記憶がよみがえったり、自分自身と向き合ったり――
喫茶店って、そんなふうに人の時間をそっと支えてくれる場所なのかもしれませんね。

「人生をやり直す」のではなく、「見つめ直す」。
そんな静かな再出発を描いた、あたたかくて、ちょっぴりほろ苦い物語でした。

☕ この本は、こんな人におすすめ

  • コーヒーや喫茶店が好きな人
  • ご飯や喫茶店の雰囲気描写で癒されたい人
  • 人生の節目に立ち止まっている人
  • 過去の自分と向き合いたい人

🔚 おわりに

派手な展開はありません。
けれど、喫茶店という空間のぬくもりや、どこか頼りないけれどまっすぐな“おじさん”の姿に、じんわりと心を動かされました。

「わかっているつもりだったけど、本当は何もわかっていなかった」
そんな気づきは、大人になってからこそ響くのかもしれません。

コーヒーの香りとともに、静かに心に染み込む一冊。
慌ただしい毎日に疲れたとき、ふと立ち止まってページを開きたくなるような物語でした。
ぜひ、あなたも“喫茶おじさん”に会いに行ってみてください。

NANAKO
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最後までご覧いただき、ありがとうございました。この記事が、あなたと素敵な一冊との出会いにつながれば幸いです。
また次の本で、お会いしましょう!